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横浜地方裁判所 昭和55年(行ウ)34号 判決 1982年12月22日

神奈川県相模原市陽光台四丁目六番四号

原告

神奈川土地建物株式会社

右代表者代表取締役

江成行雄

神奈川県相模原市富士見六丁目四番一四号

被告

相模原税務署長

斎田清治

右指定代理人

坂本由喜子

屋敷一男

富塚豊彦

豊田治彦

加納務

畠山栄悟

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五二年一一月二六日付けでした原告の同四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち法人税額三五〇二万四〇〇〇円を越える部分及び重加算税賦課決定のうち九二六万五二〇〇円を越える部分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、宅地建物取引業等を営む株式会社であるが、その昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、原告のした確定申告、これに対して被告のした更正及び重加算税の賦課決定(以下、これらを「本件更正」及び「本件賦課決定」という。)並びに不服審査の経緯は、別表記載のとおりである。

2  しかし、被告のした本件更正における所得金額のうち三一〇〇万円については、原告の所得金額を過大に認定した違法があり、したがって、これを前提とする本件賦課決定も右金額に対応する部分は違法である。

よって、原告は、本件更正のうち法人税額三五〇二万四〇〇〇円を越える部分及び本件賦課決定のうち九二六万五二〇〇円を越える部分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認めるが、同2は争う。

三  被告の主張

1  原告の本件事業年度の所得金額は、原告の申告に係る所得金額六万四五五六円に後記2の原告の流用金員一億〇九九九万二七〇二円を雑収入として加算した一億一〇〇五万七二五八円であるというべきであるから、本件更正に違法はない。

2  原告の流用金員(一億〇九九九万二七〇二円)

原告は、訴外田中梢次が昭和四九年度に訴外大貫瑞穂他に別紙物件目録記載の各土地を売却した代金合計二億二二六九万四七〇〇円のうち一部を原告の管理する江成功雄(昭和五一年九月一六日付け氏名変更前の原告代表者の氏名)名義及び渡辺孝一名義の各普通預金等に入金し、本件事業年度中に、次の(一)ないし(七)のとおりこれを引き出して原告の運転資金等に流用したもので、その合計は一億〇九九九万二七〇二円である。

(一) 江成功雄に対する貸付金の入金 五三九九万二七〇二円

原告の江成功雄に対する貸付金の返済による入金であるかのように仮装して、原告の運転資金として使用した金額

(二) 吉田政夫からの土地購入費 二一〇〇万円

原告が、右吉田から、神奈川県津久井郡津久井町大井字巳六五一番及び同六五五番所在の各土地を買い戻すため、同人に対し、昭和四九年三月一一日に二〇〇万円、同年六月一一日に四〇〇万円及び同月二〇日に一五〇〇万円合計二一〇〇万円を支払ったもの

(三) 佐藤栄吉からの土地購入費 一九〇〇万円

原告が、右佐藤から買い受けた茨城県筑波郡伊奈村板橋字上街道二二六八番の一及び同番の二所在の各土地の代金を、同人に対し、昭和四九年三月二五日に四〇〇万円、同年六月二〇日に一五〇〇万円合計一九〇〇万円支払ったもの

(四) 島崎二郎に対する貸付金 一〇〇万円

原告が、昭和四九年一月三一日、右島崎に貸し付けたもの

(五) ダイエーハウスに対する貸付金 四〇〇万円

原告が、右ダイエーハウスに対し、昭和四九年三月二五日に二〇〇万円、同年五月二九日に二〇〇万円をそれぞれ貸し付けたもの

(六) 車両購入費 一〇〇万円

原告が、訴外丸紅モータース株式会社から買い受けた車両の代金の一部として、昭和四九年三月一日、同社に対し支払ったもの

(七) 借入金弁済金 一〇〇〇万円

原告が、訴外大貫からの借入金を弁済したもの

3  本件賦課決定について

(一) 原告は、前記雑収入と認められる一億〇九九九万二七〇二円について、これを収入金額に計上せず、簿外の土地購入代金等に使用し、更に江成功雄に対する貸付金の返済による入金であるかのように帳簿に記載していた。

(二) 右事実は、原告が本件事業年度の法人税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装し、それに基づいて確定申告書を提出したものというべきであるから、原告が新たに納付すべき税額である四三二八万四九〇〇円について国税通則法六八条一項の規定を適用して重加算税を賦課決定したものであって、本件賦課決定に違法はない。

四  被告の主張に対する認否及び原告の反論

1  被告の主張2の事実はすべて認める。

原告は、昭和四九年一〇月一〇日現在で、訴外田中に対し、前述流用金員のうち、三六〇〇万円については返還債務を負っていたが、その後、右債務のうち五〇〇万円を江成が弁済したので、現在原告は右田中に対し三一〇〇万円について返還債務を負っているから、右金額は原告の所得に算入すべきではない。

2  同3のうち、本件賦課決定中九二六万五二〇〇円を越える部分については争う。

第三証拠

一  原告

1  甲第一号証

2  乙号各証の成立はすべて認める。

二  被告

1  乙第一ないし第七号証

2  甲第一号証の原本の存在及び成立は知らない。

理由

一  請求原因1の事実については、当事者間に争いがない。

二  本件更正の適法性について

被告の主張2の事実については、当事者間に争いがない。しかして、右事実によれば、原告が流用した一億〇九九九万二七〇二円は特段の事情のない限り雑収入として、本件事業年度における原告の所得に計上すべきである。原告は、右金額のうち三一〇〇万円は訴外田中に対して返還すべき債務を負っているものであるから、原告の所得と認めるべきでないと主張するが、右主張事実を窺わせるような甲第一号証の記載は右事実を証する証拠とするに足りず、他に右主張事実を認める証拠はないから、原告の右主張はその前提を欠くものであって、失当であるといわなければならない。

してみると、被告が、本件更正において、原告の申告に係る所得金額六万四五五六円に右原告の流用に係る一億〇九九九万二七〇二円を加算した一億一〇〇五万七二五八円を原告の所得と認定したことに原告主張の違法は存しない。

三  本件賦課決定の適法性について

本件更正に所得を過大に認定した違法がないことは前段認定のとおりであり、被告の主張3(一)の事実は原告において明らかに争わないから自白したものとみなす。右事実によれば、原告は本件事業年度の法人税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装し、それに基づいて確定申告書を提出したものというべきで、本件賦課決定中、九二六万五二〇〇円を越える部分についても、原告主張の違法は存しないというべきである。

四  よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川正澄 裁判官 吉戒修一 裁判官 須田啓之)

別表

<省略>

物件目録

一 所在 横浜市緑区十日市場町字中里八五一番地

面積 一三九八・三四平方メートル

二 所在 右同所八五七番地

面積 七二七平方メートル

三 所在 右同所八七七番地

面積 七一四平方メートル

四 所在 右同所八七九番地

面積 三四七平方メートル

五 所在 右同所九三〇番地

面積 六〇一平方メートル

六 所在 横浜市緑区十日市場町字 谷二二五〇番地一

面積 二七七〇平方メートル

七 所在 右同所二二四七番地

面積 七九平方メートル

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